+  策略  +    上官部下時期

 

 

 

 

 

 

今日の宴会の主役はお前な。
特殊部隊の宴会部長な先輩から、そう宣言された飲み会。

「な、なんでですか?」
ペーペーのあたしが担ぎ上げられる飲み会ってなんだ?と郁は先輩の一言に悩んだ。
「戦闘職種に就くことを反対されている親御さんが何事もなく帰ってくれたお祝い、ってやつだな」
な、なんでそんなこと、先輩方が知ってるの?!って思ったけど、そういえばそのために班のシフトを堂上教官が融通してくれたのを思い出した。
そっか。先輩方も協力してくれたってことだよね。
「まあ、それが酒を飲む口実なのはいつものことだから、気にしなくて良いよ、笠原さん」
特殊部隊の猛者達の思考に慣れてないため、小牧がフォローをいれてくれた。
「先輩達はこんどの忘年会の翌日、公休じゃないから、先にたっぷり飲んでおきたいだってさ」
そんなのんべえな内情もついでに教えてくれた。


飲み会の雰囲気は好きだ。
お酒にめちゃくちゃ弱いから、先輩達と一緒のペースではとても飲めないけど、その分食べ物で元は取っていると思う。
ペーペーだから酒と料理のオーダーやら片付けやらでいつも忙しい。総じて一番年齢の若い堂上班はそんな役目をいつもしている。

だからそのつもりで参加した飲み会だったが、めずらしく堂上に「今日はお前は座ってていい」と言われ、主役扱いされた。だが、手塚はいつもどおり堂上と一緒に動いている。
どうしてですか…?と訊こうと思ったら、小牧は代わりに答えてくれた。
「みんなさ、笠原さんが特殊部隊を辞めなきゃならない事態に陥らなくて良かった、って喜んでるんだよ」

実際に、戦闘職種に配属されるとは思わなかったといって本人が辞める場合もあるが、笠原さんみたいに親御さんの反対にあって辞める人もいるんだよ。特に女子の防衛部員とかは。
みんな笠原さんの事を可愛がってるからね、と言われ慣れない言葉までおまけについてきた。

「可愛がってる、の意味が違う気がします、小牧教官!」
マスコット、とかアイドルとか、どう考えたって戦闘職種の女のあたしには嵌る言葉とは思えない。特殊部隊の      特に事務所では、しょっちゅうからかわれているんだから、さしあたって、おもちゃ扱い、なのかな、半人前のあたしは。まあ、特別に笠原だけな、なんて言われてお菓子をもらったりすることもあるけど。
「……お前、それ単にお子様扱いされてるだけだろう?」
いつのまにか隣に戻ってきていた手塚が辛辣なフォローを入れる。
「いいじゃんお菓子ぐらい!疲れた時に甘い物を補充するのは理にかなってるんだよ!」
「そうだよ手塚。餌付けされたリスみたいで、いい表情するんだぞー、2代目クマ殺しでもな」
先輩のツッコミの最後の一言に、空いた瓶を片付けていた堂上が反応して怪訝そうな顔をした。

「だってな、特殊部隊初の女性隊員、って言ったら、どこでもオトコオンナみたいな猛者を想像するらしいぞ」
ぶほっ。
誰とも無く数人が吹き出した。
「し、失礼な!オトコオンナとかひどい!」
郁がすかさず反論した、戦闘職種で女らしさに欠ける、は自覚の内だが…それならまだクマ殺しの方がまし….でもないけど!
「いや、この前関西に出張に行ったときに言われたんだよ、その女性隊員ってどんな女か?ってな」
そうしたら、昔のガタイの良いプロレスラーみたいな猛者を想像していたらしいんだよ。もう大笑いしたぞー、と先輩は語った。
「こんなペットみたいな楽しい奴を棚に上げてなぁ」
「だ、誰がペットですか?!」
「え、誰のペットですか?そりゃ堂上に決まってるだろう」
先輩は大ジョッキを飲み干して高笑いした。
堂上としては、突然自分の名が上げられて、素直に働いてなんぞいられない。
「こんな出来の悪いペットいりませんよ!」
抗議を一発噛まして不機嫌な面持ちで小牧の横にようやく腰を下ろした。
「だけど餌付けは簡単そうだぞ」
「ちょ、いつあたしが堂上教官に餌付けされましたか?!」
その場にいた全員が堂上の顔を見てから、郁の方を向いた。
「……頭ぽんぽん、って撫でるやつじゃねーか?」
「あれは!出来の悪い部下を褒めてくれてるだけですよ!」
郁はムキになって反論した。そんな風にしてもここの人達に敵うわけ無いのにね、と小牧はほくそ笑みながらやっと腰を据えた堂上をちらっとみた。眉間の皺が深いは、飲み会に来ても変わらず、仏頂面にますます輪がかかっていた。



堂上は郁の事を部下として認めつつある。
一人前だとはとてもいえないが、十分に特殊部隊でやっていけると思う。俺がそうしたし、それについてきてくれた、そんな風に思っているだろう。
そしてまたこんな風に隊を和ませてくれる大事な存在になっていることも実は大きい。

銃を手にして血にまみれながら本を守る事が正しいと思っているわけではない。
そうせざるえないから今の図書隊がそこに在る。どの隊員も日々命をかけて本を守るつもりでいる。そんな殺伐とした職業なのだ、図書隊は。だからこの人達は本気で戦って、本気で遊ぶ。

少なくても俺のペットじゃない。
こいつは隊のペットじゃないか、と堂上は本気で思う。

あのとき突き動かされた感情で動いた俺を、正義だと見誤ったまま、お前はここへ来てしまった。
間違った正義を追いかけながら隊にいて欲しくなかったのも、追いかけてきてくれて実は嬉しかったのも、どちらも本音だ、と思い始めていた。おれがあの時の二正だと知ることはないとしても、俺を追って来て、俺の側にいると言うなら、俺が正しい方向へ導く、と。

小田原の攻防のときは、俺が手を離した状態でも1人で特殊部隊員の役目を果たした。
そうやってあいつは少しずつ、俺から離れていく、離れて一人前になっていくんだろうな、とぼんやりと思った。

そうだ。
隊の先輩の中で輪の中心に成りながらあいつはみんなに愛されている。
郁という人間の素直さと一途さに触れた者は、きっとみんなあいつを愛するだろう。人に愛される天性を持ち備えているのだから。

そう自分の中で結論づけると、微妙にすきま風が吹く感じがした。
あいつが成長して皆に愛されていくのを見ることに、どこか虚無感を感じるのはなぜだろう。
そもそも「今日」はなんであいつが主役の飲み会なんだ!其処が気に入らない。と言うか引っかかる。そんな事が口実の飲み会なのはいつものことだが、今日は、気味が悪いくらい、誰にも、何にも言われない事に作為的な物を感じるのは、どんな勘なのか?

------------認めたくない何かを吹っ切るのと、何に働いている勘なのかがわからず、不機嫌になりそうな自分を慰めようと堂上はピッチを上げて酒を飲み始めた。




◆◇◆




「めずらしいですね、教官がこんなになっちゃうの」
あたし初めて見ましたよ。
「堂上は酒強いんだけどねー」
其処には和室の隅で寝オチして上着を掛けられている堂上の姿があった。
「ま、普段の笠原さんの姿だと思ってよく見ておいてね」
「……すみません、小牧教官」
「いいんだよ、いつもはちゃんと負ぶって帰る奴がいるんだから。だけど今日はなぁ」
たぶん、起こせば起きると思うけど。
「あたしが教官を連れて帰りますからっ」
今日は小牧と手塚は飲み会の後実家に帰ると言っていた。
先輩達は、一次会で帰るような面子は誰もいない。
「じゃあ笠原さん、タクシー使って帰って」
そういわれて飲み会のおつりの中から1000円札を渡された。
図書基地までは駅から遠くないので、普段タクシーに乗るのは申し訳ない距離だが、幸い今日の飲み会は駅の反対側の店だったから、タクシーでもいいだろう、と郁なりに気を遣った。


「教官、起きてください、きょうかん!」
そばに堂上の鞄と上着を用意して郁は軽く揺さぶり起こす。随分深く眠ったらしく最初は微動だにしなかったが、何度目かの声かけですっと目を開けた。

「帰りますよ」
「ああ」
堂上のこんな顔を見るのは珍しい、寝ぼけ眼で郁を見つめてから自分の置かれている状況を確認している、そんな所か。
「…寝てたか」
「ええ、珍しいですよね、教官」
「スマン」
そう言って1人畳に手をついて立ち上がろうとするのを、すかさず郁が脇に体を入れて堂上を支えた。
「…いい、大丈夫だ」
「結構飲んでましたよ、教官。ちゃんとあたしが連れて帰ります、って小牧教官達に約束したんですから」
だから遠慮しないでください、そう伝えたが、堂上は立ち上がった後は郁から離れて、自分で上着と鞄をを抱えて外へ出ようとした。



堂上自身はそれほど飲んだとも思ってないし、目が覚めたと同時に酔いも覚めたつもりでいた。
現にこうして自力で靴履いて上着も着れる。
手をポケットに突っ込んだまま基地へ向かう上官の少し後ろを郁はハラハラしながらついて歩いた
手を、差し伸べていいものなのかどうか。
眠っていてくれたら、タクシーまでなんとか担いで行けば済むことだったのに、堂上は目を覚まして歩いて帰るという。
師走に入って急に冬の寒さも本格的になってきたから、たしかに酔いも覚めそうな冷え込みだけど…。
郁もこけももサワーを一杯飲んでほろ酔い気分だったが、寝落ちするまでは飲まないようにセーブした、今日ぐらいは教官に迷惑を掛けたくなかったから。


先日事務所で休憩しているときに、堂上の誕生月が12月だと先輩から聞いた。
日頃迷惑ばっかり書けて世話を焼いて貰っている上官だ、耳にした以上、誕生日ぐらいお礼を、なんて思った。
だけど男の人へのプレゼント、って難しい。しかも相手に迷惑にならないような物、となると...と必死で考え抜いた物を、郁は密かに鞄の中にしまっていた。

教官はいつも寝オチしたあたしを送ってくれた。
もしかしたら、今日は寝オチしなくても送って貰えるかもしれない、という密かな企みがあった。二人で帰寮するときなら、誰かに誤解されたりせずにを渡せるし、受け取って貰えるかも、日頃お世話になっている上官へのプレゼントを。


「笠原」
少し前を歩く堂上がそう言って振り返った。
「はい」
「大丈夫か?」
と堂上は声を掛けたのは良かったが、よそ見をしたせいで向こうから来る人にぶつかりそうになる。
「教官!」
郁はすぐさま駆け寄り堂上の腕を引く。その勢いもあって大きくふらついたので、郁は素早く堂上の腕の下に体を入れて腰へ手を当てて堂上を支えた。

「スマン」
そのまま郁はしっかりと堂上を支えて一緒に歩き出す。
「いえ!上官を支えるなんて滅多にできませんから!」
遠慮しないでください、と笑って堂上の脇の下へ体を滑り込ませて体ごと支える体制になった。
すぐ横に郁の体温を感じることは珍しいことではない。柔道の訓練では当然のように堂上は郁と組んでいるのだから。
だが今日は、そこで感じる温もりと郁の香りが堂上の鼻腔を刺激して体全体に廻ったかのような錯覚に陥る。

つまり、こいつは女なんだ、と体が感じている、と言うことらしい。

拙い。
間近に迫るコンビニの灯りに気づき、寄りたいと伝えた。
郁は堂上の体を離し、数歩後からコンビニについてきた。堂上は店に入ると、とりあえずトイレに向かい、郁は水を2本購入した。

店を出た後、遠慮することなく購入した水のボトルを受け取って、コンビニの斜め向かいにある児童公園のベンチに腰を下ろした。郁もそれにならって隣に座った。
「……大丈夫ですか、教官」
「ああ、スマン。ほんと」
そう詫びの言葉を短く口にした後、またボトルの水を煽った。

「何か…あったんですか?」
郁は遠慮しながらも、覗き込むようにして堂上に訊いた。
上官が何か悩んでいたとしても、本当はそんなことを訊ける立場じゃない。だけど、今までの飲み会でも、酒に強いと聞いているし、こんな風な堂上は見たことがないから     自分が、堂上を支えて歩いたように、何か手伝えることはないだろうか、そんな気持ちだった。

「……お前は上官の心配をするほどの余裕があるってことか?」
酔って寝オチした郁を介抱するのは堂上の役目だった。
今日は逆転して堂上が郁に介抱されている。そんな風になった自分が気に入らない、本当にそれだけだ、と言い聞かせた。

なぜだ?
何が気に入らない?こいつが、俺の手を離れて一人前になっていくこと?隊のみんなに------------そして、いつかはどこぞの男に愛されること?

大きく頭を振って、この散らかった思考をどうにかしたかったが、余計酔いが回りそうなので辛うじて抑えた。
郁を見ると、不思議にも怒っているのか、恥ずかしいのかわからないが、少し赤い顔をして俯いていた。

「何言ってるんですか!今日はセーブしたんです、ちゃんと!」
郁なりに、堂上の様子を心配しながらも悩んでいた。鞄の中に忍び込ませてある、堂上へのプレゼントをどうやって渡そうかと。日頃お世話になってますから、っていう台詞を言えば自然だろうと心の中で何度も練習したのだ。
だけど、酔っぱらっている教官なんて!
酒に弱い郁が言えた台詞じゃないが、どうみても今日の堂上の様子はおかしい。
何を怒っているんだろうか、何に怒っているのだろうか...

も、もしかして、あたし、説教受けるとか?

最近はあんまりやらかしていないつもりだったが、気づかない失敗なんてきっと山ほどある。
教官、酔っぱらって急にそんなあたしのフォローをし続けていることに腹立たしくなったとか?!

郁までもが堂上につられて、なのか思考がめちゃくちゃになりそうだった。


「笠原」
「はいぃぃ」
なんだかその呼ばれ方が業務中の説教前の様で、思わず敬礼しそうな勢いで返事をする。

「........今日俺の誕生日だって知ってか?」

知らなかった。実は12月だと聞いたとき、先輩に何日なのか聞いたが、いつだったかなぁと、教えて貰えなかった。
小牧教官にも聞いたのだが、タイミング悪く他の話が始まって答えて貰えなかった。

だから今日だなんて!
だって、飲み会でも誰も「おめでとう!」とか言わなかったじゃん!!
知らなかったけど、プレゼントは用意している。だから、どう答えていいか混乱してしまった。

「...知ってました...」
知らなかったけど、プレゼントは用意してあるんです、の方がよかったか。それも変な話だ。なので知ってたと言ってしまったのだが……その一言が堂上の不機嫌な様子に拍車を掛けた。
「そうか」
堂上はたった一言、そうつぶやいて残りの水を飲み干した。お前にとって上官の誕生日なんて、そんなものか、と。再び蓋を閉めて空になったペットボトルをベンチの側にあったゴミ箱へ投げ入れた。

「じゃあ笠原、俺の欲しい物をくれるか?」

堂上は郁の方をみて、意外にも真剣な顔で言った。
教官、欲しい物があったんだ、と気づいたら、自分の用意した物はダメ出しされた気分になり、鞄の中でずっと触れていた堂上あてのプレゼントから手を離した。そもそも教官の趣味なんて知らなかったし……と思い立って自力で用意したプレゼントは無駄だったと思うと落ち込みそうになった。

「あ、はい、あたしが用意できる物でしたら!」
気を取り直して、堂上の要望を聞こうと答える。プレゼントを渡すのは遅くなりますよ、と時間をもらってまた買いに行けばいい、そんな思惑だけで返事をした。

堂上の体が座ったまま郁に向き直って、より深く眼差しが交差する。酔っているからか堂上の瞳の潤みが強く光って見えた。そう思った瞬間に顎に手を掛けられ少し引き寄せられた。
な、なに------------っ

と思った時には顔が近づき唇を塞がれていた--------------堂上の唇で。

驚きで目を見開くが、当然堂上の表情は近すぎて見えない。
なんで     !!
と、問い正そうとしたら、後頭部を反対の手で押さえられて、頭ごとグッと引き寄せられた。


--------------息が出来ない!!


離してもらおうと掌を堂上の胸につき、突っぱねようとするが、どうやって呼吸したらいいかわからず、その力も出ない。
ようやく少し触れ合う唇の角度が変えられたところで息継ぎをすると、「んふっ.....」と、妙な声が出た事にさらに驚いてしまった。

変えられる唇の重なりの後には舐めるような堂上の舌が郁の歯列を軽く叩く。当たったと思った後はすぐにそのまま舐め上げられた。息をしたくて薄く口を開いたら空気と同時に堂上の舌も郁の中に入ってきた。

「....んぁ...ふ...」
だ、誰の声?!と漏れた吐息にそんな音がついてきたのが、ただひたすら恥ずかしい。
絡めとられる舌は抵抗もできず、堂上にされるままになる。そして、思考がぼんやりとして       何かの快楽を感じ始めると、抵抗と言う文字が郁の思考からも薄れていった。


どれくらいそうしていたのか。
きっとほんの数分だったのだろうが、郁には数十分にも感じた。

そしてようやく唇を解放された、と思ったら、抱きしめられた------------長い間。

いや、正しくはしがみつかれた-------------だった。

「...きょう...かん?」
だって、乱れていた呼吸が整ってきたと思ったら、寝息に変わっていたから。

教官?!
なんであたしにキスしたんですか?!
欲しい物、ってなんなんですか?!

---------------ここまで来て、どうして寝落ちするんですか?!

何も訊けないまま、寒空の元、身動きが取れなくなってしまった……
「教官!!起きないと誕生日プレゼントが『風邪』になっちゃいますよー!!!」
そして起きてちゃんと説明してください!!-----------強引なキスの意味を。



◆◇◆



「あいつ、俺たちからのささやかな誕生日プレゼントを用意してやったのに、珍しくあんな勢いで飲んで寝落ちとはなあ」
二次会の席では、むさ苦しい男連中が一つのテーブルで意外にもこぢんまりと飲み続けていた。酒の魚は可愛い後輩達の事だ。帰宅するから、と郁と別れた小牧と手塚も実はそのまま連れてこられていた。まあ、電車さえあれば急ぐわけでも無かったから問題はなかったのだが。
「あいつ、いつもはお姫様を送るからって、あんなに飛ばして飲まないしなぁ。誕生日だからか?」
「まあ、誰も堂上におめでとう、って言ってやってませんからね、隊長命令でしたけど」
「その上今日は笠原が主役だ、って事にしましたしね」
「……あいつ、拗ねて飲み過ぎたのか?」
先輩達にかかると、堂上も立場何もあったもんじゃないな、と小牧は親友の隊での立ち位置を憐れみながらも、こみ上げてきそうな笑いを必死に我慢した。
「堂上二正は今日誕生日だったんですか?!」
真顔で手塚は先輩達に尋ねる。お前は知らなかったんだな、ま、お祝いはやったからいいんじゃないか?と言われたがその意味が手塚にはわからなかった。
「果たして王子様はお姫様のキスで目覚めるか、って所か?」
「・・・・・・笠原はお姫様、って柄じゃないと思いますけど」
あはははは、お前はそういう奴だよ、相変わらず可愛いなと、堂上と郁が居なくなったから、矛先が手塚に向かってきた。
「まあ、ドロップキック、ってことはねーだろう。あいつの眉間の皺を減らすのに協力しておけ、って事だよ、手塚」
未だ先輩の言うことが腑に落ちないものの、二人にする方が余計皺が増えそうですが、と真顔で答えたところで、全員の爆笑を誘った。

「やっぱり堂上班は愛でないとだなー」



fin

(from 20121213)

 

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